政府・日銀の為替介入から1週間。相場の潮目は変わったのか?
- 約6年半ぶり、異例の大規模介入実施でドル/円、クロス円急上昇
- ドル/円85円台からは輸出企業のドル売りで上値重い
- 日本の単独介入に、海外からは批判も
- FOMCの追加緩和策を示唆する声明でドル全面安に、ドル/円も85円割れ
- 下値では介入も予想されるものの、効果は限定的に
政府・日銀、約6年半ぶり、異例の大規模介入を実施
9月15日、政府・日銀は「足元の動きは経済、金融の安定に悪影響を及ぼし看過できない問題だ」として「過度な変動を抑制するため為替介入を実施」しました。
野田財務相は介入を明言した上、「必要な時には介入も含め断固たる措置を取る」と改めて市場を強くけん制しました。
日銀による為替市場介入は、2004年3月16日以来、実に6年半ぶりのことでした。
介入は異例とも言える大規模なもので、報道によれば、東京時間だけでなく、欧州時間、NY時間にも実施し、総額約2兆円というドル買い介入としては史上最大規模のものでした。
政府・日銀による介入の結果、ドル/円は82円台から85円台、ユーロ/円は108円近辺から111円台まで上昇しました。
輸出企業の実需売りが厚く上げ渋る展開に
市場介入に急上昇したドル/円、クロス円でしたが、ドル/円の85円台、ユーロ/円の110円台などからは、これまで円買い予約を控えていた輸出企業が、9月末を控えてドル/円、クロス円の売りオーダー(円買いオーダー)を持ち込みました。
特にドル/円の85円台からは売りが厚く、その後ユーロ/円が113円を伺うレベルまで上伸した場面でも、ドル/円は上げ渋る展開となって86円台に乗せられませんでした。
その後先週金曜日に、アイルランドとポルトガルの財政債務に関する懸念報道が出て、再び欧州のソブリン・リスクが意識される流れとなってユーロ/円は112円
付近へと反落、このこともドル/円の上値を重くしました。
各国からはネガティブな反応
ここ数年主要国は「為替相場は市場に委ねるべき」との方針 から、市場介入に対して否定的な立場をとっています。
日本も含めG7として、中国に対し人民元の為替レートを“不当に元安なので是正しろ”と長らく要求してきました。
その一方で日本は自国通貨を安くする為の介入をしたのですから、国際的な非難を浴びても仕方がありません。
ユーログループのユンケル議長が「今回の日本政府および通貨当局による単独介入は歓迎されない」 「円が対ユーロで過大評価されているとはみなしておらず、引き続き過小評価されていると考えている。日本当局の行動を好まないことを明確にした」などと、日本に対する批判を繰り返しています。
また、米国の反応として、ガイトナー財務長官はノーコメントを貫いていますが、米上院のドッド銀行委員長は「日本による単独介入や中国の動きは為替政策での国際協調とは相入れない」と述べ、米下院歳入委員会のレビン委員長は日本の介入に「非常に困惑」していると述べています。
FOMC声明で85円割れ!
9月21日に開催された、米FOMC(連邦公開市場委員会=FRBにおける日銀の金融政策決定会合に相当)では一部で期待されていた追加緩和策の導入は見送られたものの、発表された声明が前回よりもよりハト派的なものでした。
FOMCは、現在の景気の状況を「過去数カ月間に生産および雇用の回復ペースが減速した」とし、インフレに関しては「物価安定と雇用最大化を促進する目標に長期的に最も一致するとFOMCが見なす水準をいくらか下回っている」としています。
その上で、今後の金融政策について「景気回復の支援や、インフレ率を目標と一致する水準に徐々に戻すために、必要に応じて追加の緩和措置を実施する用意がある」と明言しました。
この声明を受け米長期金利が急落、ドルも主要通貨に対して全面安となり、ドル/円は介入後初めて85円を割り込みました。
今後の見通しは?
政府・日銀は、「必要なときには介入も含めて断固たる措置を取る」と野田財務相が繰り返し述べていることから、今後も市場介入を実施すると考えられます。
しかしながら、ユーロ圏や、米議会筋からのあからさまな批判や、これまで中国に対して「元安の是正」を強く求めてきたG7の中核国としての立場、そして輸出主導で経済の建て直しを図ろうとしている米オバマ政権との関係を考えると、ドル/円の水準を押し上げるような介入の仕方はできないと考えられます。
そうなると、介入は、82円台以下の水準、一日で1円以上などの急激な円高の動き、などの限られた場面でしか実施できないと予想できます。
現在ドル/円は他の通貨に比べドル安方向への動きがゆっくりしたものになっています。これは、介入警戒感でドル/円のショートが作りにくいことに加え、介入期待感でドルを買い下がっている向きが多い為です。
したがって、先週多くの投資家が80円割れを狙ってショート・ポジションを持っていた時とは状況が全く異なり、例えば82円台まで下がって介入が再び実施されたとしても、上昇局面ではショートの損切りではなく、ロングの利食い売りが大量に待っていることとなり、介入の効果は半減すると予想できます。
自律的なドル/円相場の反転には、米景気回復とそれに伴う米長期金利の上昇が必要と考えられますが、FOMCの見方からも、その時期はまだ近くない、と考えられます。
日本政府が、介入などの手法でドル/円の下落を止めようと考えたとしても、それまで介入を続けることは、政治的にも資金的にも難しいでしょう。
一度介入を始めてしまったことから、今後もし介入を休止すれば、全く介入を行なわなかったときよりも、円高のピークは高い(ドル/円のレートは低い)ものになることも考えられます。
市場介入は、短期的には成果を上げることができますが、相場の流れを変えることはできない、と考えてます。